メリーゴーランドは空席


その時。
部屋にノック音が響いた。





「葵?」




幸人くんの声。
私は咄嗟にベッドの上に置いていたブランケットを取り、肩に羽織る。


「葵、明日一緒に学校に行かない?」

私は息を殺し、物音ひとつ立てないように注意を払う。

「オレ、迎えにくるよ。高校まで一緒に行こう?」
幸人くんの優しい声に、両目が潤む。




「葵に会いたいんだ」




無理。
無理だよ、幸人くん。

だって私、怖いんだもん。


「……見られたく、ない」
気づくとそう答えていた。
小さく嗚咽(おえつ)が漏れる。

「私、今のままの私を見られたくないの。ごめん、……ごめんなさい」


「変わりたいって思ってるの?」
幸人くんの声は優しいまま、静かな部屋に響く。