メリーゴーランドは空席

「何、この女。だっせー」
男の子は毒づく。

幸人くんは男の子に近づき、胸倉を掴んだ。
一瞬、殴ってしまうのかヒヤッとしてしまった。
男の子も目をぎゅっとつむって、顔をそむけた。
でも幸人くんは殴ったりなんかしなかった。

ぼそっと男の子の耳元で何かを呟いた。

幸人くんが男の子から離れる。
男の子は顔色が悪くなり、
「もう行こうぜ」
と他の子に言うと、足早にどこかへ行ってしまった。


またふたりになった私と幸人くん。
「え?どうなったの?」
私は不思議でたまらなくなり、思わず幸人くんに聞く。
「いや、心底ムカついたからちょっとアイツが1番言われたくない言葉を言ってみただけ」
「え?」
「葵は知らなくていいよ」
幸人くんはそう言って、男の子達が消えた方向を睨んでいる。