メリーゴーランドは空席

「あの、こんにちは」
とりあえず挨拶をする。
知っている子だったっけ?

幸人くんも気づいて、
「どうした?」
と私に聞く。

男の子は黒縁眼鏡をかけていて、青い甚平を着ている。
手には恐竜のぬいぐるみ。

「迷子?」
幸人くんがしゃがんで男の子と目線を合わせて聞く。
「すみません、そうやってすぐに『迷子』って決めつけるのはやめてください」
男の子は心外だ、と言わんばかりに眉間にしわを寄せた。

「お母さんが迷子なんです。一緒に探すのを手伝ってくれませんか?」
「お母さんが迷子?」
私と幸人くんは目を丸くする。

「名前は?」
幸人くんが男の子に聞く。
「……知らない人に名前を教えちゃダメなんですよ」