「ねぇ、キミひとり?」
ベンチに近寄ってきた男の人が私に声をかけてきた。
「時間があるならオレとどこかで涼まない?」
「え?」
キョトンとしてしまう。
「可愛いよねー、彼氏とかいるの?」
男の人は私の隣に座る。
私は慌ててベンチから立ち上がり、その場から離れようとした。
「ちょっと待ってよ、お話しようよ!」
男の人が私の腕を掴もうと手を伸ばしたその時。
「お前と話してる時間なんかねぇんだよ」
と聞き慣れた声がした。
振り返ると幸人くんが怖い顔で立っている。
男の人の手を払いのけて、
「悪いけど、他当たれよ」
と低い声で言った。
男の人は舌打ちをして去って行く。
「葵、大丈夫?」
まだ男の人を睨みつつ、幸人くんの声がさっきまでとは違う優しい声になった。



