メリーゴーランドは空席

私もグラウンドを眺める。
もう幸人くんは走り終わったみたいで、どこにいるのかわからなかった。


「越野さん」
グラウンドを見つめながら橘先生は言う。
「焦らず、ゆっくりでいいからねー」

何のことを言っているのか、私にはすぐわかった。
でも何も言えなくて。

束の間の沈黙のあと橘先生は小さな声で「やべっ」と言って、
「今、大原先生と目が合った気がする」
と体を窓から離した。

「大原先生?」
「あのねー、体育の先生だよ。ベテランの先生でさー、サボってるのバレたかしら」
「……え?先生は見回りって」
私の言葉に橘先生はハッとして、
「いや、見回りしてるんだよ?いやいや、嘘じゃないって」
と言い、
「……はい、じゃ、仕事してきます」
と観念した様子で回れ右をした。