予想通りの反応で、だけど迷惑だとはっきり言うわけにもいかず、困っていたら隣に座る子が彼女の文句を遮る。


「あたしたち以外にも客がいるし、騒ぐのは迷惑だよ。なにより、あんた飲み過ぎだから」


まだ不満そうにしている彼女からお酒を取り上げる。


結月と呼ばれたその子は、渡された水を飲む。
どうやら少し落ち着いてくれたらしい。


「なにか、あったの?」


また睨まれるかと思って、内心怯えながら話しかける。
するとその子が見せた目は、まるで捨てられた子犬のようだった。


「……聞いてくれる?」
「もちろん」


それは得意分野で、少しでも彼女の気持ちを楽にできるのであれば、いくらでも話し相手になる。


「私ね……彼氏に裏切られたんだあ」
「……ん?」


てっきりさっきの続き、合コンの愚痴を言われるものだと思っていたから、思わず聞き返してしまった。


「彼氏ね、浮気してた」


どこかで聞いたことあるようなシチュエーションで、反応に困る。


「ちょうどほかの女と歩いてるところを見ちゃって、別れてやるー!って」


泣きそうな表情から、彼女がどれだけ傷ついたのかが伝わってきて、こっちまで苦しくなる。


「でも……なんであんなこと言っちゃったんだろうって思ったりもするんだ」
「そうなの?」
「なんて言うか、さ……」


彼女は初めて真っ直ぐ目を見つめてきた。


「裏切られたのはたしかなんだけど、まだ、アイツが好きなんだ」


その照れ笑いは、とても可愛らしかった。