私はダンスに誘われない

鞄をがさごそ探る姿を見て、私は思わず声をかけてしまった。

「--あの」
ポケットから持っていた絆創膏を取り出す。
「これ良かったら使ってください」
小さな子のお母さんにそれを差し出す。

「あ、ありがとうございます」
お母さんは小さな子のひざに絆創膏を貼って、
「家に帰ったら消毒しようね」
と優しい声で言った。

「痛いの、早く治るといいね」
私は小さな子にそう言って、手を振った。


ハッとして、中田くんのもとに戻る。
「中田くん、すみません。話の途中で……」
中田くんは私を見つめて、
「優しいよね、河岸さんって」
と言った。

「え?」
私は思わずきょとんとしてしまう。
「オレ、学校に戻るよ。鞄、置きっぱなしだし」
そう言って背中を向けた中田くんに、
「あの……、今日は」
と私が言うと、中田くんはそれを遮って、
「待って」
と振り向いた。