私はダンスに誘われない



誰もいないけれど……。


ふと脳裏にあの日のことがよぎった。


私はギュッと目を閉じる。
背中に冷たいものが流れていくことがわかった。
咄嗟(とっさ)にまたうつむいてしまう。

「河岸さん?」

「……あの、私って今、からかわれているんですか?」
私の言葉に中田くんは目を大きくした。
「ーーえ?」

うつむいたまま、のどの奥から声を振り絞って尋ねる。
「これって何かのゲームですか?……い、いじめとかですか?」
後半は声がかすれてしまったけれど、中田くんには伝わったらしい。
私の視界にある、中田くんの右手がグッと握られた。

「ーー……オレ、そんなことしないよ?」


ハッとして中田くんを見上げると、そこには悲しそうな中田くんがいる。