その、2日後。
「兄貴、おはよう。 今日は1日俺に付き合ってもらうよ」
「ああ」
「この映画、俺が言うとネタバレになるかもしれないけど4DXだとかなり揺れるよ?」
「それは昨日聞いた」
心配そうな顔をするユウタを押しのけたあと、改めて家を出て・・・。
メインの映画館に行くためには、電車に乗る必要があるらしく、俺たちは駅へと向かっていた。
昔のように肩を並べて、見慣れた街を歩く。
それだけで、満たされた気分になる。
「あと映画館の近くには水族館もあるみたい。 今日は映画と音楽鑑賞優先だけど、今度行ってみるのもいいかもね」
「水族館・・・前に行ったきりだな」
「兄貴は、どんな魚が好き?」
「ん、クラゲ」
「・・・ああ・・・」
魚じゃない気がするけど、ユウタは妙に納得がいったような顔をした。
「兄貴らしいね。 って、人の波に飲まれてるし駅逆方向だから・・・!」
「・・・・迷った」
「というか、少し意外だよ。 兄貴って方向音痴だったんだね」
「あと電車に乗るのも苦手だ」
「あー、人混み嫌いだもんね」
閉所恐怖症というわけではないけど、飛行機などでの長距離の移動は苦手だ。
ただ、常に開放的でいたいだけ。
ああ、そういえば・・・。
芸能人って電車より車で移動してるイメージがあるけど、ユウタは頻繁に利用してるからな。
人混みに紛れた方がカモフラージュになって目立ちにくいだとか・・・。
まあ、人並み程度よりは少なめだけど。
「誰か! 捕まえて!!」
「えっ・・・!?」
突然響き渡った悲鳴と共に、周囲にざわめきが走る。
悲鳴のほうに目を向けると、俺たちの目に入ってきたのは・・・。
地面に倒れた女の人と、女物のバッグを手にバイクで走り去ろうとする男の姿だった。
ひったくり・・・。
逃走経路が稚拙すぎる・・・。
盗みのプロの手口ではなさそうだ。
単なるバカのど素人だろう・・・。
そんなことを考えてた。