「覚悟しろ。 逃げたらその時点で殺す。 蜃鬼楼の連中全員を殺す」
『これはまた、随分と口の悪い主催者だね』
「いいから黙って相手になれ! ぶっ壊してやるからさァ!」
『ま、なんにしても付き合ってあげるよ。 ルナさんが私にとっての悪意の象徴・・・敵であることは間違いないし』
「ユリさんが勝ったら、何でもしてやるよ。 僕が勝ったら・・・まあ、悪いですがここで死んでください」
『ゲームのルールは?』
「射撃の早打ちです。 そこに時計があるでしょう? 針が9時ちょうどを指したらスタートです」
『わかった。 その勝負、受けるよ』
迷わず頷いて腰を上げた。
私は精神を整えるように目を閉じる。
それから静かに目を開けると、ルナさんの方に一歩進み出た。
「世の中、信念の強い方が勝つ。勝てばユリさんの信念が正義です」
『そうだね。 でも、ルナさん。 私は思うの』
あの人が唯一教えてくれたこと。
平和を願うシュウさんがあの日、言った言葉・・・。
「俺たちは、目的のために必死になってる。
扱いづらい歪んだ野獣だけど、長い目で見てやってよ」
あの人は、自分のプライドを捨ててまで、私に本音を話してくれた。
体裁とか、申し訳なさとか、痛みとか、全部抜きにして。
“弱さは負けることじゃなくて諦めることだ”
そう私に教えてくれたんだ。
だから私も、私情を挟んでしまった。
私にとって“仲間”は大切なもののひとつ。
自分のために、失うわけにはいかないんだ。
それを壊そうとするなら、私はルナさんを殺す。
それだけ。
