悪党にしては・・・どうにも間抜けだった。

確かに私は半分監禁されてたけど、衣食住には何一つ不自由しなかったのは事実だし。

Roseliaや家族も含め、普段はあまり人のことを信じないんだけど、兄さんのこと信じちゃったんだよね・・・。

この人は私を傷つけることはあっても、欠落品で役立たずでも傍に置いてくれるって。


『料理が得意で、でも厳しいところもあって・・・。 安易に責任を放棄するなと叱ってくれた』


「どんな経緯があったにせよ、西郷兄弟を助けると決めたのはお前の意思だろう?
だったら逃げちゃダメだ。
他でもない、お前自身の選択から」

自分の容姿が商品に売られてる中でも、明るく前向きでいられたのは兄さんの存在が大きい。

だからいい人だと思う。

あ、でも、両親を殺した時点で犯罪者なのは事実だけど・・・。


「・・・忘れたよ。 秩序だの正義だのクソ喰らえだ・・・」


『義理と人情を忘れずに、悪を裁き穢れのない秩序を守る。 その信念を持って、私は今まで復讐者達と向き合って来たよ。 だけど、救いようのない害虫ゴミクズ以下なら、命を奪ってもいいだなんて思ってない』


「・・・・何度言えば分かる。 俺は秩序を乱し世の中を混沌に導く悪魔だと・・・!」


『みんな心の奥に牙を隠し、鬼を飼ってる。 私が守りたいのは、染谷アンリ。 君は私にとって、すごく・・・誰よりも大事な人なの』


じわりと涙がこみあげてくる。

この人を失いたくない。

悪魔だろうと何だろうと、私が兄さんを好きな気持ちがある限り。