ヒロトside


あ・・・雪・・・。

もうすぐクリスマスだから?


『ユウタママ? バルコニー行きたい。 荷物、下着あるけどそこら辺は信用してる』


「そう? バルコニーはね?」


OK。

ツッコミ不在ってことだな。


『わかるからいいッ』


ユリは勝手知ったる家の中をダッシュした。


「おーい・・・・いくら防寒対策してるからって長居すると凍死するよ。 中に入ろうぜ?」


バルコニーに出るとシュウが遠慮がちに声をかけた。


『ありがと・・・でもあと1時間待って?』


1時間・・・正気の沙汰とは思えないな、雪を見てはしゃぐなんてガキじゃあるまいし・・・。

風邪引かれても困るんだがな。


『これが雪か。 うん、やっぱり、左目残して正解だった。 孤児院の子供たちにも見せてあげたかったな』


「は?」


『冬の、白が好き』


独白のように呟かれた言葉に、記憶の中の“彼女”が鮮明になっていく。

けど・・・それと同時に疑問も湧いた。

雪を知らない口振りとか、左目を残して正解だとか・・・。

右目は見えてないのか・・・?

孤児院の子供って、まさか・・・。

そう考えると、人畜無害に見えたユリが怖い存在に思えてきた。


『・・・私が、怖い?』


「!」


俺の表情を読んだのだろうか。

ユリは俺を見つめ、そして・・・。


『これじゃまるで・・・あの時と同じだね』


どこか悲しそうに自嘲するユリから、俺は目が離せなかった。


『私のこと、孤児院での生活のこと、みんなはどこまで・・・』


小さく呟かれた言葉の先は、聞こえなかった。

・・・孤児院? 片目・・・

ふと、脳裏に何か過ぎった気がした。

どこか見覚えのある、哀しい瞳。

深い安心を与えてくれる声色。

ある時だけ右目が赤くなるヘテロクロミア。

俺は、それらの色を知ってる気がした。