一睡もできなかったあたしだけれど、目は冴えていた。


眠気なんて少しもないまま制服に着替え、鞄を持つ。


家を出る時に母親から「朝ご飯は食べないの?」と声をかけられたけれど、どうせ食欲なんてなかった。


それに、気になっていることが1つある。


早足で学校へ向かっていると、途中の道で知樹と鉢合わせになった。


「こんな早い時間に登校して来るなんて、珍しいね」


あたしもいつもよりかなり早く家を出て来たのに、こんな場所で会うとは思わなかった。


「あ、あぁ……」


知樹はぎこちなく返事をして、あたしから視線を逸らせた。


「どうしたの? まさか、昨日帰ってから何かあった?」


「いや、大丈夫。なにもないから」


慌てた様子でそう言い、左右に首をふる知樹。


なんだか様子がおかしい。