クローゼットから一旦制服を手にとったが、それをやめて私服に着替えた。



もしも直弘もなにか経験していたとしたら、のんびり学校へ行っている暇もないかもしれない。


《恵梨佳:美奈。知樹も昨晩あの水を見たんだって》


《美奈:本当に!? あの水って、やっぱり貯水池の水なのかな?》


そう聞かれて、あたしは一瞬スマホを落としてしまいそうになった。


きっと、そうなのだろう。


頭のどこかでは理解していたけれど、そんなことありえないと否定し続けていたのだ。


でも、もう認めないといけない。


あたしたちはあの場所へ行ってから、奇妙な経験をし始めたのだから。


《恵梨佳:たぶん、そうだと思う》


《美奈:あの貯水池に行ったことが原因だと思う?》


その質問にはすぐには返事ができなかった。


きっと美奈の考えは正しい。


だけどあそこは住宅街だったのだ。


他に異変があった人がいれば、噂になっていても不思議ではない。


でも、ネットにあの貯水池についての記事は出ていなかった。


《恵梨佳:わからない。もう1度、行ってみたほうがいいと思う》


本当はもう2度と近づきたくない場所だったが、行くしかない。


前へ進まないとあたしたちはずっと奇妙な現象に悩み続ける事になるだろうから……。