背中にジワリと汗が流れて行くのを感じる。


「誰か……助けて……!」


周囲は民家に囲まれている。


大きな声を出せば、きっと誰かが助けに来てくれるだろう。


だけど、あたしの喉から出たのはか細い声だった。


まるで、誰かに喉を押さえられているかのようで、声が出てこない。


やがて、あたしの足が一歩前に出た。


ズルッと、無理矢理引きずられたように動く。


それは紛れもなく、自分の意思ではなかった。


「な……んで……?」


この赤ん坊を下ろしたいのにうまく行かず、行きたくもない貯水池へ向かって動く両足。


あたしは混乱し、涙が滲んで出てきていた。


その間にも、ズルッズルッと、あたしの足は交互に動き、池に近づいていた。


容赦なく進む両足を止めることができず、あたしは貯水池に足を踏み入れていた。


片足が水に入った瞬間深い池にジャボンッと落下する。