「また4人で遊びに行きたいね」


「そうだなぁ。俺は恵梨佳と2人でもいいけど」


スラッと出て来た言葉にあたしは目を見開いた。


それってどういう意味?


そう聞きたいけれど、今度も言葉が出てこなかった。


肝心なときに何も聞けない自分が腹立たしい。


「あたしの家、もうすぐだから大丈夫だよ」


目前まで家が見えてきてあたしはそう言った。


「そっか。じゃあまた学校で」


知樹が立ち止まって言う。


「うん、またね」


手を振って別れようとした、その時だった。


不意に知樹の顔が近づいて来た。


息がかかるくらい近い距離に来たと思った次の瞬間、チュッと軽い音を立てて、知樹の唇が、あたしの唇に触れたのだ。


顔が離れて行ったとき、知樹は真っ赤になっていた。


それでもあたしは何の反応もできずに、目を見開いて立ち止まったままだった。


「じゃあ、またな!」


知樹は照れ隠しのように大きな声で言い、走って来た道を戻って行ったのだった。