「知樹は他にお店を見なくてよかったの? 買い物してないけど」


「俺はみんなと遊びに出られただけで十分」


そう言って笑う。


いつも練習練習と忙しそうな知樹だから、こうして外に出るだけで気分転換になるのかもしれない。


「次の土日はまた練習なの?」


「一応その予定。だいだい隔週で休みになるんだ」


「そうなんだ」


ということは、次の次の週はまた休みかもしれないということだ。


もちろん、試合が近づくとそうも言っていられないのだろうけれど。


そうしている間にあたしたちの前にバスが停車した。


昼を過ぎて動く人が増えてきたのか、バスの中は満員だった。


といってもこのショッピングモール前で降りる人がほとんどだ。


あたしと知樹がバスに乗った時には半分ほどの人数まで減っていた。


「少し寄り道して帰ろうか」


「え?」


あたしは隣に座る知樹を見た。


知樹はジッと窓の外の景色を見ている。