みんなの話を照合してみると、全員同じ声を聞いていたことがわかった。


あれほど大きな声だったのに、民家の玄関は1つも開かない。


そのことが不可解だった。


「もしかして、俺たちだけに聞こえて来たのかな?」


不意に智樹が言った。


「え?」


「ほら、集団心理ってあるだろ」


同じ場所にいた人たちが不安や恐れから、全く同じ幻覚を見たり、幻聴を聞いたりすることがある。


時には同じように過呼吸になったり、同じ夢を見る時もある。


「今の声が勘違いってことか?」


直弘が眉を寄せて言った。