俺は友江の前でしゃがみ込み、乱れた髪の毛を直してやった。


これが、俺が友江にしてやった最後の優しさだった。


「認知して」


震えながらそう言った友江の首を俺はきつく締めあげていたのだ。


さっきまで幸せそうにほほ笑んでいた友江の顔が、一瞬にして恐怖と絶望に歪む。


俺の腕の中でバタバタと陸に跳ね上げられた魚のように飛び跳ねる。


それでも俺は手の力を緩めなかった。


強く強く、締め上げる。


やがて友江は全身から力を抜いて動かなくなっていた。


口から泡を吹き、目は見開かれ、糞尿が垂れ流されていた。


俺は大きく深呼吸をして、まずバスタオルで汚れた床を拭いた。


このままじゃ俺の服も汚れてしまいからだ。


それから友江の体を引きずり、玄関まで移動する。


そこで友江の体を横たえて置き、一旦外を確認した。


周囲はすでに暗がりに包まれていて街灯のオレンジ色の明かりしか見えなかった。


友江の家から見える貯水池にフェンスはなく、誰でも足を踏み入れることができる。