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バスに揺られて隣街で降りるとすぐ貯水池が見えて来る。


水は相変わらず濁っていて、こんな所に投げ込まれた友江さんと赤ん坊のことを思うと胸が張り裂けそうだった。


どうしてこんなに残酷なことができるんだろう。


知樹と直弘に挟まれて歩く館下先生を見て、あたしはそう思った。


館下先生は自分の罪をカミングアウトしている間も、全く悪びれた様子は見せなかった。


まるで、自分の為に他人が死ぬのは当然だと思っているような、傲慢な態度を貫いていたのだ。


だからこそ、学校内で生徒を殺そうとするなんて大胆な行動ができたのだろう。


5人で貯水池の前に到着した瞬間、あの声が聞こえて来た。


アアアアアアアア!!


悲痛な赤ん坊の泣き声。


この世に生を受けることができず、それでも何かを訴えかけたくて必死に声を上げている。


すべてを知った後だからか、この声を聞くと涙がでてきた。


苦しいよ。


冷たいよ。


そう言っているのが理解できた。


「館下先生にも聞こえますよね?」


そう聞くと、館下先生はフンッと鼻を鳴らしたのだった。