見ツケテ…

友江さんにとってはそれほど強い念が残ったと言うことなんだろう。


館下先生のあまりにも身勝手な態度に、憎しみは増大したに違いない。


「赤ん坊が可哀想だとは思わなかったんですか」


美奈が赤らんだ目で言った。


「それは仕方ないことだった。妻に黙って養育費を出したとしても、いずれバレることだ」


「殺人だって、いずれバレるだろうが」


今まで怒りを押し込めていた直弘が言う。


直弘はすっと館下先生の腕を掴んでいて、逃げ出さないようにしている。


「その時は相手も殺すだけだ」


なんの躊躇もなくそう言った館下先生に、毛が逆立つのを感じた。


この人は、本当に人を殺すことに抵抗がないのだろうか?


何度も何度もあたしたちに危害を加えようとしたのは、罪悪感が存在してないからじゃないだろうか?


大切な感情が欠落した館下先生が、一番の恐怖の対象だと思えた。


「だけど、あんたは赤ん坊のエコー写真を持ってただろ」


直弘の言葉に、あたしは館下先生のジャージのポケットからエコー写真が出て来たときにことを思い出した。