見ツケテ…

「俺が結婚した直後だった、友江が妊娠したと言って来たんだ」


あたしは鏡の中で見た赤ん坊を思い出していた。


へその緒が付いたままの赤ん坊。


「赤ちゃんは、この世に生まれてきたんですか?」


美奈が質問する。


その声はひどく震えていて、すでに目には涙が浮かんでいた。


「俺は結婚しているんだ。認知なんてできるわけないだろう」


まるで吐き捨てるような言い方だった。


館下先生を見ていると怒りでどうにかなってしまいそうで、あたしは窓の外へ視線を向けた。


流れて行く景色を見て、少しだけ気分が変わる。


「その後、館下先生はどうしたんですか?」


知樹が聞く。


その声も震えていた。


この中で一番ショックを受けているのは、きっと知樹だろう。