靴を履いた瞬間、柔らかな感触があったのだ。


「なんだ?」


知樹があたしの靴に近づいて中を確認した瞬間「わぁっ!」と、声を上げて後ずさりをした。


「なに? どうしたの?」


片方靴を履いていないまま、あたしはそっと近づく。


しかし知樹がそれを止めた。


「蜘蛛だ!」


「え?」


キョトンとしていると、靴の中から一匹の大きな蜘蛛がノソリと這い出て来たのだ。


背中にはオレンジ色の模様が入っていて、一見して毒蜘蛛だとわかった。


しかし、日本の自然界で見かけるような毒蜘蛛ではない。


「離れたほうがいい!」


知樹に言われてあたしたちは後ずさりをした。


靴から出て来た蜘蛛はノソノソと動いて外へと向かっている。


「どうしてあんな蜘蛛があたしの靴の中に……?」