見ツケテ…

4本の足が、こちらへ向いている。


「恵梨佳、もう朝よ」


その声に顔を上げると、両親があたしを見下ろしていた。


「まだ夜だよ」


そう返事をした時、雲が流れて月明かりが両親の姿を照らし出した。


その姿が見えた瞬間息を飲んでいた。


両親は頭からつま先までグッショリと濡れ、髪の毛や服の袖からポタポタと水をしたたらせていたのだ。


咄嗟に身を起こそうとしたが、ビクともしない。


まるで金縛りに合ってしまったかのようだ。


両親はびしょ濡れの状態であたしを見下ろしている。


「恵梨佳、起きなさい」


その声はいつもと変わらない父親の声だった。


だから、余計に鳥肌が立った。


異様な光景の中で聞こえてくる、日常の声は異質以外の何物でもなかった。