アアアアアアアア!!


それは悲痛な叫び声だった。


自分の力ではどうしようもない、無力な赤ん坊の声だった。


赤ん坊はこちらへ近づいてくる。


その距離が縮まるほどに、声が大きく響き渡る。


やがて、鏡の中の赤ん坊と目が合った。


赤ん坊がこちらへ向けて手を伸ばす。


その血まみれの小さな手が、鏡のすり抜けて、ヌッとあたしの眼前に現れた……。


「キャアアアアア!」


赤ん坊の手があたしの頬に触れる寸前、ようやく悲鳴を上げることが出来た。


同時に両足が動き、トイレの外へと駆けだしていた。


誰か!


誰か誰か誰か誰か!!