「おい、起きろ」
 聞き慣れた声。
「起きろ、このドアホ」
 彼の手があたしの身体を揺らす。ちょっと乱暴だけど嫌じゃなかった。
 あぁ……。
 ぼんやりとした頭の中であたしは思う。
 四季だ。
 中学の教室から冬ちゃんと行ってしまった四季がここにいる。
 よかった。
 あれは違ったんだ。
 夢を見ていたんだ……。
 四季がなおも身体を揺さぶりながらあたしを起こそうとしている。
「おい、いい加減にしろ」
「四季……」
 言いつつも、つい半笑いになってしまう。
「キスしてくれないと起きられないよ」
「起きてるじゃないか」
「起きてないもん」
 あたしは目をつむったままだ。
 四季…は身体を揺らすのをやめている。
 ここはあたしの部屋。
 あたしは高校生。
 髪型だってショートにしている。
 さっきのは夢……。
「ね、キスしてくれたら起きる」
 あたしは四季が好き。
 四季もあたしが好き。
 何もしてこないから、あたしは少し不機嫌になって口を尖らせる。
「ねぇ、キスは?」
 四季が黙っている。
 恥ずかしがってる四季も可愛い。
 見てないけど。
 けど、このままだと起きられない。キスをせがんでおいて、してもらえないうちに目を開けるなんてそんなの嫌だ。
 数秒。
 何もなし。
 待ちきれず、あたしは言った。
「キスしてくれなきゃ、四季のこと嫌いになっちゃうよ」
「構わないぞ」
 即答。
 「別にお前がいなくても平気だし」
「えっ?」
 びっくりして思わず目を開けてしまった。
 いつの間に来ていたのか、四季の横に冬ちゃんがいる。
 四季が冬ちゃんを抱き寄せた。
「俺には冬美ちゃんがいるからな」
「……」
 唖然としているあたしの前で二人がキスを……。