「お、お前……。なかなか勇気のある発言やな、友也。そいで、その初キスっていつや?」

果敢に攻めてくるな、おじちゃん。

恥ずかしいような気もするけど、隠し立てする必要もないか。

「えっと、そいは、小六の二学期の終業式の日」

「しょっ、小六!?」

おばちゃんとおじちゃんが同時にハモった。

またしてもフリーズだ。

「ちょっとした事故みたいなもんやったけど、俺にとってはかけがえのないファーストキスの思い出として胸に刻まれとる。その頃からかな、ずっと一生、明日美と一緒におりたかって思うようになったとは」

多分明日美も、あの時から俺の事を意識してくれるようになったんじゃないか?

それまではただの友達、ただのお隣さんって感じでしか見てなかっただろうけど、俺の事。

中学の修学旅行でも、暗闇の中で明日美にキスしたことがあった。

あれは涼介に挑発されてやってしまったが、最初のキスとはわけが違うし、不意打ちだなんてまるで騙し討ちみたいだし。

……言わない方がいいだろうな。

「あ、そう……。今日聞いたことは全部明日美には内緒にしとくけんね。それにしても今時の若者は……」

今時の若者……か。

俺もそうなのかな。

そりゃ小六って言えば俺たちはまだ十一才だった。

確かにファーストキスには早すぎたかもしれない。

だけど、キスって最高の愛情表現だから、悪いことだとは思っていない。

キスより先に進みたいという気持ちがないと言えば、嘘になる。

もう高校生なんだし、健全な男子だったら誰でも好きな女の体に触れたいと思うものだ。

俺だって、明日美と……っていう願望は勿論ある。

明日美だって今時の若者だから、もしかしたら昔の人みたいな貞操観念はないのかもしれない。

だけど、俺は自分の欲望を満たすこと以上に、明日美を守りたいし大事にしたい。

今の時代、高校生や中学生でも性交渉することを簡単に考えている奴が多すぎる。

そうじゃないだろ?

『今時の若者らしからぬ』なんて思われるかもしれない。

『ただ単に女を抱く度胸がないだけだ』とバカにされるかもしれない。

バカにしたければそれで構わない。

言いたい奴には言わせておけばいい。

誰になんと言われようとも、自分の考えを曲げるつもりはない。

俺は明日美の貞操を守り抜いてみせる。

婚前交渉なんて、あってはならない。

結婚初夜までは、俺だって童貞を守ると誓ってやるからな。