雛乃に出した文は確実に本人の元へ届いたはずなのに――返事はなかった。

ぽんの動揺は凄まじく、終始庭を行ったり来たりしてはうずくまり、また思い出したようにうろうろして天満たちを心配させた。


「ねえ天ちゃん、どうしてお返事来ないのかなあ?」


「お祖父様の式神だから届かないってことはないはずなんだ。何か起きたのかな」


「ぽんちゃん可哀想。どうにかしてあげられないの?」


うろうろしているぽんをしばらく見守っていた天満は、腰を上げて庭に下りると、ぽんの前で膝を折った。


「ぽん、何が起きてると思う?」


「雛乃は…悪い奴に狙われてて…おら…おら…あの娘っ子と兄妹のように育ったから心配で心配で…」


「悪い奴って?」


「雛乃に惚れてて無理矢理嫁にしようとしてる悪い奴なんでさあ…」


――どこかで聞いたことのあるような話だ。

なんとなく胸を押さえた天満にすぐ気付いた暁は、天満に駆け寄って背中に負ぶさってその端正な美貌を覗き込んだ。


「ねえ、雛乃ちゃんを探しに行ってみない?」


「遠野まで?それはさすがに朔兄がいい顔しないよ。君はここで鍛錬して早く一人前の当主にならないとね」


「でも…」


「それとも君の弟が当主になった方がいい?僕はどっちでもいいよ、君の弟も見込みがありすぎる位だからちゃんと鍛えても…」


「駄目!駄目駄目ー!私がちゃんとするから弟だけは…」


うるうる目を潤ませている暁の頭を撫でた天満は、身体を震わせているぽんのもふもふの身体を優しく撫でてやった。


「原因は追究するからちょっと時間をもらえるかな」


「ご、ご迷惑をおかけしやす…」


「いいんだよ、よく尽くしてくれるお礼と思って」


なんとなく他人事とは思えず、朔の元へ向かった。