指輪の魔法がとけた時

そっと握られた左手に唇が触れた。

「約束だ。

俺と結婚するんだからな。
絶対に離さない。

今は俺がキスをしたのが指輪のかわりだ」

そう告げる慎の顔が涙でにじむ。

左右に首をふる私に慎が眉を潜める。

自分の名が刻まれた指輪を手に取ると慎に渡して左手を差し出した。

「お古でもお下がりでもないよ。
これが私の慎の想いがたくさんつまった一生の宝物だから」

「いいのか?」

とまどう慎に笑顔で答える。

「私を慎太郎のお嫁さんにして。
もう一度、私を生涯離さない魔法をかけて私を縛り付けて」

「愛してるよ。
あすか、一生離さない。
あすかは俺のものだ」

左手にそっと指輪をはめて、唇を落とすと、優しく私を抱き締めて温かな唇が重なった。

何度も重なる唇はやがて深さをまして、私はまた再び今度こそ幸せな魔法を薬指にかけられた。


  完