田仲や慎が何を心配して警戒しているのかわからない。

「課長との間を邪魔する気なんてないからな。
俺は同期として、長谷川に幸せになってほしいし、お前の泣き顔や苦しむ姿はみたくないんだ。

何かあればいつでも頼れ。
同期として助けてやるからな」

「ありがとう、田仲」

思えばずっと私をそばで助けて支えてくれていたのに、私は今までまるで彼の優しさに気づきさえしなかった。

右手にはめられた指輪の呪縛は、私からいろいろな物事を見極める目を奪っていた。

ううん、違う。

私が見ないようにしていたのだ。

都合の悪いことを見たくなくて、見ないように考えないようにしていたのだ。

指輪がはずされたとき、私は開放されたのだ。

幸せになる約束が果たされなかった指輪の呪縛から、慎が開放してくれたのだ。