指輪の魔法がとけた時

「あの人さ、三股くらいしてたんだぜ。何度か長谷川に教えてやろうかとおもったんだけど、なんか本命がお前っぽかったから云えなくてさ。

海外転勤になったときはやった!
って喜んだけど長谷川指輪しだしただろ?
行く前に約束してったんだって。
だったら連れて行けよって思った。

俺なら迷わず連れて行くよ」

「うん、私もそう思ってた。
やめる決心はついてたんだ」

「そっか…。
ていうか今幸せそうだもんな。

やめよう、こんなおもしれくねー昔話。
悪かったな、思い出させて。

うまくいってんだろ?課長と」

「うん」

顔を綻ばせると

「はいはい、ご馳走さま。
二次会一緒に行こうな。
ようやく掴んだ幸せなんだ、絶対逃がすなよ?

まぁ課長が逃がさないだろうけど、俺から離れるなよ」

「えっ?うん、わかった」

結婚式の二次会なんて遠くから二人を眺めるだけで、多少の心の痛みはもちろんあるだろう。

酷い人だったとしても、私は六年もの間ずっと好きで、幸せな時間もあったのだから。

だからって、いまさら泣いて悲しむほどの辛さはないし、心から二人の幸せを祝える気持ちは持ち合わせている。