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亮二のことは、見かけることはあってもあえて向こうから私に話しかけてくることはなかった。

社内に彼がいる日常は、三年前に戻ったようで、堪らなく切なくて苦しくていまだに外せないでいる指輪は私の気持ちを物語っていた。

六年間も想い続けていたのだから、そう簡単に私の中から追い出すことは難しい。

亮二の笑顔を見れば、胸が苦しくなり、婚約者の常務のお嬢さんが会社に訪れて二人で並ぶ姿を見たら、涙がこぼれ落ちそうになった。

いくら慎が私を甘やかして優しく包みこんでくれても、やっぱり私は停止したままその場から動くことができずにいた。