そんな人が何故私と一夜を過ごし、結婚しろと迫ってくるのか…?

これは、煩い上司たちからの縁談を断る為の口実に使うため…?

目の前の渡瀬課長を見つめながら、眉間にシワを寄せて、思考回路が停止していた脳ミソをフル回転させるが、正解が導き出せない。

「ぷっ…なんだよ、百面相して。
眉間にシワ、よりすぎ」

軽くおでこをデコぴんされて、無意識におでこを擦りながら

「課長、モテるんですから何も私と結婚しなくたっていいじゃないですか。
課長を好きな女の子と一緒になればいいのに。」

私の言葉に課長の顔が曇る。

「いくら好意をもたれたって、俺が好きじゃないんだから結婚なんてできるはずないだろ」

「えっ…?」

「だから!昨日の夜何度も言ったよな俺。
あすかが好きなんだって。
横浜から異動してきた時からずっと好きだったって。
付け入る隙ができたなら俺はどんな小さな隙でもついていく。」

真っ直ぐな瞳に射ぬかれて、ストレートにものを言う渡瀬に私の顔はすぐさま赤くなった。