そしてついに、スピーチが始まった。
まず社長である父が挨拶をし、次に俺が呼ばれた。
紬は俺の腕から手を離そうとする。
だから俺は、右手でそれをそっと押さえて、
「行くよ」
と囁いた。
戸惑う紬を連れて、俺はステージに上がる。
当然紬は、慌てて俺の腕から手を外して、後ずさりした。
「ほら、紬もおいで。
今日は一緒にいてくれる約束だろ?」
俺は強引に紬の手を取ると、そのまま一緒にステージに上がった。
「専務の中谷 尋輝です。
いつも当社のために多大なるご厚情を賜り、
誠にありがとうございます。
このたび、この場をお借りしまして、
私事ではございますが、婚約致しました事を
ご報告させていただきます。
こちらが、婚約者の裁 紬さん
です。
当社共々、若輩者の私たちにも暖かいご指導
ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げ、
簡単ではございますが、挨拶と変えさせて
いただきます。
本日は、誠にありがとうございます」
俺の隣で茫然自失の紬。
それでも、俺が頭を下げたのを見て、一緒に頭を下げてくれた。
うん。
これで紬は、俺の婚約者。



