涼ちゃんは何事もなかったかのように、教室に入ろうとする。
その時涼ちゃんと目が合ったけど、私たちは挨拶も会釈もしなかった。
なんか、それどころじゃない気がしたから。
「なんだよ、オレのことは無視かよ」
男子は窓から廊下に顔を出して、涼ちゃんを睨む。
廊下にいる生徒たち、教室内のクラスメートが男子と涼ちゃんを交互に見ている。
空気がピリッと張りついているように感じた。
涼ちゃんは何も言わない。
ただ黙ってズレたメガネの奥から男子の顔を見ていた。
私は見ていられなくなった。
しかもイライラしてたから。
ついつい声を上げてしまった。
「そんなに知りたいなら教えてあげようか?」
その場に居合わせた全員の視線を感じる。
それでも黙っていられなかった。



