依良が兄貴を好きな事はすぐにわかった。
好きな子の事だし何より俺は依良や兄貴の様に鈍くない。


だからそれに気づいてしまった時悔しかった。
なんで兄貴を、って────。



だけど依良が兄貴を好きになるのはしょうがないとも思った。




外見も内面も非がない。

優しくて何でも出来て格好良くて。

俺の憧れの兄貴だったから。



だけどそれでも好きな子を譲る程俺は優しくはない。

依良を振り向かせて見せるって、依良に格好良いところを見せるって、毎日そればっかりを考えてた。




けど、俺に出来る事は兄貴も出来る。


依良に格好良いとこ見せたくて頑張った勉強も運動も、俺が必死に頑張った事は兄貴には朝飯前で。

俺は兄貴の通った道を四年後に通る事しか出来ない。



それでもいつか絶対振り向かせて見せるって思ってた。



だけどいつからかその気持ちは薄くなっていったんだ。


兄貴には敵わない。

だって俺の憧れなんだ。認めた人なんだ。



それに…………、何をしても依良は俺を見てはくれなかった。