「あの幼馴染みの依良さんの事なんですけど…」
「依良の?」
「誕生日パーティーにも来ていましたし、とても仲が良いんですね」
「小さい頃から一緒でしたから」
「そうなんですか。でも……私としては他の女性と親しくされるのはあまり気分の良いものじゃないです」
栗原皐月の声のトーンが変わったのがわかった。
「もちろん遥架さんを疑うつもりなんてありませんし、あの方は私から見たらまだ高校生の可愛いお子様ですし。なのでこれは私の単なる我が儘なんですが……、」
「何ですか?」
然り気無く依良を馬鹿にした栗原皐月に兄貴の声が少し低くなった。
他人にはわからない程の、小さな変化。
きっとこの変化に栗原皐月は気づいていない。
「依良さんを家に入れるのは控えてほしいんです」
だからこんな図々しい事を平気で言えるんだ。