「えみちゃん、学校辞めたんだって」




髪を結いながら、クラスの派手な女の子が言ったのは、誰も特別なことなんてなにひとつないと思っているような、ある秋の日の朝だった。



肌寒くなってきたね、朝起きられないよね、部活のあとの帰り道が地獄、なんて、夏から秋に変わった変化で盛り上がる平和なわたしたちは、教室の真ん中付近で投下された季節感のない爆弾のような発言に、一斉に彼女をみた。




ように感じただけで。




本当は、何人かがその言葉に反応しただけで、みんなそこまで興味があるわけではないようだった。

『えみちゃん、学校辞めたんだって』は爆弾ではなく、教室に迷いこんだ銀杏の枯葉くらいのニュースだったようで。