あの事実を伝えてしまえば、きっとこの笑顔は消えてしまう。
それでも、隠し通すことなんて出来るはずもない。


「……怒りたくても怒れないよ」


白木くんは手を拭きながら、首を傾げる。


「……光輝が……遺体で見つかった」


白木くんの表情が固まる。
店内は沈黙に支配される。


「……志鶴さんは、どうしてここにいるんですか」


静寂の中にいたせいか、彼の言葉が恐ろしく冷たく思えた。


「光輝さんが亡くなったんですよね?志鶴さんの職業はなんですか?」


責められている。


わかっていた。
私だって、白木くんと同じようなことを思っている。


「……知り合いが殺された場合、捜査には加われない。そういう決まりなの」
「そんなの……」


無視すればいい。


白木くんはそう続けようとしたのだろう。
だけど、私の顔を見て言葉を飲み込んだ。


私が何も思わずにここにいるわけがないと、察してくれたのだろう。


夢で見た光輝とのやり取りがなかったら、私は意地でも現場にいようとしただろう。


自分の無力さに呆れ、ため息が出る。


すると、いつの間にか白木くんは紅茶を作っていて、私の前にカップを置いた。