白木くんの声が、今にも泣きそうな感じだった。


「俺は、ずっと光輝さんが嫌いだった。幼なじみというだけで、志鶴さんの気持ちを独り占めして」


予想にもしていなかった言葉で、思わず顔を上げた。
白木くんは泣きそうな、でもどこかすっきりしたような顔をしている。


「俺は、どうすればいいのかわからなかった。光輝さんのことは尊敬していて……志鶴さんの悲しむ顔は見たくなくて……でも、全部どうでもよくなるくらい、光輝さんが憎いと思ってしまった」


すっきりした、は私の勘違いだ。
白木くんは後悔をしている。


「……あなたたちに出会わなければよかった」


彼はそう零して、店をあとにした。


知らぬ間に白木くんを傷つけていた。
彼が嘘をついたのは、私を想っていたから、なのかもしれない。


だとしても、私は彼が許せない。


「他人を恨んではいけないよ。そういう闇の感情は、自分に返ってくるからね」


いつだったか、光輝に言われた。


光輝は、どんなときも正しかった。
いつも間違った道に進もうとする私を引き留め、正しい道に連れ戻してくれた。


でも、教えてほしい。
どうすれば、私から大切なものを奪ったあいつを許せる?


いつも微笑んで立っていたカウンターを見るけれど、貴方の姿は当然ない。


記憶の中の貴方は、一生私の問いに答えてくれない。