慌てて視線を警部に向ける。


「……気になるんだろ?」


返答に困った。
気にならないと言えば嘘になるし、本心を言ったところで状況が変わるわけでもない。


私は何も言えない。


「行っていいぞ」
「は?」


上司に見せる態度ではないと、すぐに後悔するが、自然と口から出てしまった。


「私情を持ち込まれるのは困るということであの決まりが作られたが、お前はここに、矢場光輝の友人ではなく、刑事として入って来た。今の木瀬なら、大丈夫だと思ったんだよ」


自分が認められたようで、嬉しかった。
しかし、複雑な気分でもあった。


「そんな簡単に……」
「お前の言いたいこともわかるよ。でも、自信があるんだろ?」


他人に言われてしまうと、そうでもないような気がしてくる。
だが、ここは言い切ってしまったほうがいいと思った。


「はい」


まっすぐと警部の目を見て答えた。
そしてあの喫茶店へと急いだ。


アリバイがないからというだけで白木くんを疑っているわけではないと、ホワイトボードを見てわかった。
細かいところまでは見えなかったが、警察が証拠もなしに白木くんを犯人だと言うわけがない。


このまま、白木くんが犯人だと確定してしまえば、彼は逮捕され、私が彼の話を聞くことはできなくなる。