もしそうであれば、殺すつもりはなかった、と言うかもしれないが。


聖徳太子のようなことをしたせいで、一気に疲れが襲ってきた。
ただでさえ精神的に疲れていたのに、余計疲れるようなことをしなければよかった。


私は人の隙間を通り抜け、木陰に入る。


ため息とともに、座り込んだ。


「刑事なんて、志鶴ちゃんには向いてないよ」


目を閉じた瞬間、光輝の声がした。
慌てて目を開けたが、光輝の姿はどこにもない。


当たり前だ。
今の言葉は、私が進路を決めたときに光輝に言われた言葉で、それが脳内再生されただけだ。


そのときの光輝の言葉を思い出すために、もう一度目を閉じる。


「でも、志鶴ちゃんは優しいから、被害に遭った人に寄り添える、いい刑事になりそう」


どっちだ、と言った気がする。


「……やっぱり、証明が苦手な志鶴ちゃんには無理か」


……思い出した。
証明問題と事件解明が似ていると、光輝は言ったのだ。


殺人であれば、結論は決まっている。
犯人を見つけ、なぜ犯人なのかを誰にも文句を言わせない証拠を見つける。


その証拠探しができないのではないか、という意味だったのだろう。
当時はそれを挑発だと捉え、意地で刑事になった。