その現場を見に来ている十数人の野次馬に混ざる。
捜査員に気付かれてはいけないということで、あまり前には行けなくて、現場の様子は見えない。


「あの喫茶店の店長さんが亡くなったそうよ」
「いい人だったのに」
「もう会えないなんて、信じられない」


野次馬の会話のほうがよく聞こえる。
周りの声に意識を集中させ、重要そうなことを記憶する。


「買い出し中に殺されたって」
「彼の日課だったよね」


そう言えば、そうだった。
光輝は、毎朝同じ時間にここを通る。


それを知っての犯行だとすると、光輝の知り合いが犯人の可能性も考えられる。


「通り魔だとしたら、もうここを通れないや」
「凶器が見つからないって言っていたから、怖いね」


凶器を持ち去った……というだけで、通り魔と決めつけるのは違う。
顔見知りでも、凶器を持ち去ることは出来る。


「どうして店長さんが殺されたのかしら……」
「いつも笑っててウザかったとか?」
「そんな理由で?」


そんな会話をしている、斜め後ろにいる女性二人はその結論を冗談にした。
だが、私はそうはできなかった。


顔見知りの犯行にした場合、そのようなことも動機として考えられる。