日も上がりきらない、薄暗い早朝。


河原で、遺体が発見された。
腹部を刺され、出血多量で死亡。
第一発見者はランニング中だった男性。


現場には多くの捜査官が集まっている。


彼女はその現場に、必死に向かっていた。
警察だというのに、彼女には体力がなかった。


体力の限界などとうの昔に越えている。
それでも、重い足を動かす。


到着しても、息を整えるので精一杯だ。


「木瀬?そんなに慌ててどうした?」


彼女に気付いたのは、彼女と同期の刑事だった。


「遺体が、見つかった、て……」


整えられていない状態で話したせいで、言葉は途切れ途切れだった。
彼女は深呼吸をする。


「そうだけど……まずは落ち着けよ」


そう言われて、息を整えることに集中する。
落ち着いた彼女を見て、彼は現在集まっている情報を彼女に教えた。


「身元は……?」
「今調べてる」


彼女は小さく足を進める。
心には葛藤があった。


知りたいけれど、知りたくない。


「身元が判明しました!」


現実に引き戻される。


「被害者は矢場光輝(こうき)


その報告には続きがあった。
しかし、彼女の耳には一つも届かなかった。