不機嫌な彼と恋のマジックドライビング

「あの…えっと…」

トギマギしてうろたえている私にくすくす笑いながら

「会社で降ろすと騒ぎになるから駐車場でいいかな?」

社員駐車場にゆっくり車を入れた片瀬さんは

「あー。一番やっかいな奴に見つかったか」

と楽しそうに笑う片瀬さんの車にむかい、不機嫌な香田さんが歩いて来るのが見える。

「あんまり刺激すると、そろそろ暴走するかなアイツ。

いつもすましてるけどさ、見たいよな?焦る顔とか。さてさて、どうするかなアイツは」

口角をあげて笑う片瀬さんは、いつもの爽やかな優しい笑顔ではなくて、意地悪な黒い笑みを浮かべている。

昨夜の私たちのやり取りなんて知らない片瀬さんは楽しそうに笑っているが、告白されて一晩しかたっていないのに、片瀬さんの車に乗って出勤してきた私はとんでもなく尻軽女だ。