「田端、場所かえていい？｣

私はまだ香田さんの腕に閉じ込められたままだ。

彼女の言葉で取り合えず涙は止まっていた。

「はい。っていうか今の話がほんとなら弟さん家にいるんですよね？

香田さんの家じゃダメなんですか｣

田端が淡々とした口調で香田さんに言い返した。

「…別にかまわないけど｣

「じゃあ蓮見お願いします。
俺は帰ります。彼女の話で俺は納得できたんであとは蓮見を納得させて仲直りしてください。

香田さんが蓮見を大事にしてくれないと、澤田や俺が蓮見を諦めた意味がないですから。

じゃあ俺は帰ります。
じゃあな蓮見。

帰りは香田さんに家まで送ってもらえ｣

遠ざかる足音に緩まない腕から逃れられなくて振り向くことができない。

「明莉…｣

香田さんの声が耳元で聞こえた。