「真湖、落ちるぞ」

 そう言われて、真湖は、はっ、と目を覚ました。

 ベッドの横に赤子を抱いた雅喜が立っていた。

「落ちるぞ、真湖」

 もう一度、雅喜はそう繰り返す。

 赤ん坊が落ちることを心配していたが、よく考えたら、赤ちゃんは壁際に寝かせていたのだった。

 落ちかけていたのは自分のようだ。

「課長~」
と暗がりの中、真湖の雅喜のスーツの袖をつかむ。

 夢の中と同じにスーツのまま赤子を抱いた雅喜に言った。

「今、夢の中で、課長が名前をっ。
 この子の名前を言おうとしていたので、聞こうと思ったところで、目が覚めちゃったんですよ~っ」

「……夢の中で訊くな。
 現実に訊け」