隆雄は、莫迦な子ほど、可愛いというように、雪乃の頭を撫でながら、言ってくる。

「わかった。
 羽村の息子が会社を辞めたり、お前を断ったりしないよう、全力で圧力をかけてやろう」

 だから、そういうの、いりませんってば……と困ったように笑いながら、雪乃は伯父を見上げた。
 
 伯父の後ろ、窓の外では、父親が植えたユズリハが揺れているのが見えた。

 子どもの頃、庭の木を入れ替えたときにも、伯父が、あれは残しておけと言ってくれたのを、今、思い出していた――。