「はい、乗って。
 駅まで行くから、タクシー乗って帰って」

 タクシー代は払ってあげるから、と言う羽村の横にしゃがむと、

「……なにしてんの」
と言う。

「いえ、羽村さんに運んでいただくとか、申し訳ないので」

 すみません、としゃがんだおのれの膝に額をぶつけるようにして、頭を下げたが、なんだかそのまま上げられない。

「いや、いいから、乗って帰ってっ。

 そこで、寝ないでっ。
 ちょっとっ、凍死するよっ」
と言う羽村の声がうっすら聞こえた。