雪乃は、羽村と真湖たちの家を出て、二人で夜道を歩く。

「もう僕って人間がどういう人間かよくわかったでしょ。
 気が済んだら、おうち帰って、二度と来ないでね」

 はい、と雪乃は頷く。

「じゃあ、家は何処?」

「此処です」
と雪乃は見覚えのあるユズリハの木を指差す。

「お世話になりました。
 ありがとうございました」

 おじさんには申し訳ないけど、私が羽村さんと結婚したいと思うのは、羽村さんにはご迷惑なことのようです。

 もうこれでおわりにしましょう、と思いながら、
「それでは、おやすみなさい」
と頭を下げ、ユズリハのある敷地に入ろうとすると、

「待ったっ」
と腕をつかまれる。

「そこ、家なわけないでしょっ。
 君、缶チューハイ、一缶しか呑んでないよねえっ?」
と言う羽村に道に引き戻された。